2011年03月24日

放射能はどう身体に悪いのか(1)

 震災前に読んだニュートンの記事と、その他おぼろげな知識を元に書いてみます。
 誤りがあるかもしれませんので、盲信しないで他の情報源も当たってみてくださいネ。
 なお、根拠提示、反論提示、解説図提供などしていただけると泣いて喜びます。ご意見・ご感想もお待ちしております。
 
 第一回(?)は放射線と外部被爆について解説します。
(ちなみに、mSv=ミリシーベルト、μSv=マイクロシーベルト。1mSv=1,000μSv、1μSv/時=8,760μSv/年)


 まず放射能とは何か。
 放射能とよく言われますが、この言葉の正確な意味は『放射線を出す力』です。一般的には放射線と放射性物質をひっくりめて放射能と言われることが多くあります。
(厳密には言葉の誤用になりますが、当方でも一般的な認識の意味で『放射能』と言う事にします)

 放射能の危険を知るにはまず、放射線と放射性物質が違うものであることをご理解ください。
 放射能には放射性物質と放射線があって、放射性物質から出るものが放射線です。
 直接の被害を出すのは放射線のほうです。

 放射線には何種類かあって、主なものはコレくらい。

 アルファ線:陽子2個と中性子2個。粒が大きいくて、紙一枚でも防げるくらい。
 ベータ線:電子1個。数ミリのアルミ板で防げる。防護服で防ぐのはちょっと難しい?
 ガンマ線:ものすごく波長の短い電磁波。防ぎづらい。分厚い壁で防げる。
 中性子線:中性子1個。物凄く防ぎづらい。大量の水がないと防げない。

 粒が大きいほうが防ぎやすいですが、防げなかった場合の害が大きいのです。


 さて、この放射線が生物にどういう悪さをするかというと。
 っとと、注意書き。放射線被爆には外部被爆と内部被爆がありますが、ここでは外部被爆、つまり身体の外から放射線を浴びる場合について考えます。

 人間の身体はおよそ60兆個もの細胞からできています。一説には50兆〜100兆とも言われます。
 この細胞の中で最も重要なのが細胞核、さらにその中に収められたDNAです。DNAがなくなったり機能しなくなると、細胞は必要な物質を作れなくなり死んでしまいます。

 このDNAに放射線があたると、当たった場所の原子がDNAから外れてしまい、DNAが壊れるのです。


 DNAが壊れるとどうなるのか?
 これがですね、一箇所くらいならどうってことないのです。というか実を言うと、放射能がなくてもDNAはちょくちょく壊れます。
 DNAは二重になっていますので、一箇所壊れたらすぐダメになってしまうことはなく、修復が可能です。そして人間のDNA修復力はとても高いのです。

 とはいえ、DNAの修復力は完全ではありません。DNAの使用中の箇所が壊れたり、二重螺旋の両方が同時に壊れたり、故障箇所が多すぎたり、なんて理由で修復に失敗しておかしくなってしまうこともあります。
 そうやってDNAの故障してしまった細胞がどうなるのかは、故障した箇所によってまちまちです。DNAの故障箇所が、その細胞が使わない部分であれば、そのまま普通に機能してしまいますし、細胞が活動に必須の成分を作るための部分が故障すれば細胞は死にます。また細胞の死を制御する部分(そんなものがDNAにはあるんです)が故障するとガン細胞になったりします。


 ガンになるって凄く危ないんじゃないの?
 いえいえ、これも一個二個程度なら問題ありません。免疫機能がやっつけてくれます。
 一説には、健康な人でも極少量のガン細胞が生まれ、免疫機能がそれを処分するそうです。

 ただ、人間のガンに対する免疫力は、DNAの修復力ほど強くはないのでしょうか。
 ガン細胞が多くなると、免疫機能が追いつかなくなって、爆発的に増えたり移転したりします。これがガンという病気です。
 また、免疫機能自体がガンにかかって機能しなくなると、感染症にかかりやすくなってしまいます。いわゆる血液のガン、白血病というやつです。


 まとめましょう。
1)放射線がDNAに当たるとDNAが壊れる。
2)壊れたDNAの修復に失敗すると、細胞が死ぬ、もしくはガン細胞になる。
3)ガン細胞が増えすぎる、もしくは致命的な場所の細胞が死んだりすると、ガンになる。

 急激に放射能を浴びると(2)の細胞の死が多発します。
 まず250mSvで白血球が減り、500mSvでリンパ球が減り、1,000mSvを超えると目が悪くなったり毛が抜けたり、体組織が色々機能しなくなって、死亡。
 福島第一原発の作業員でも許容量250mSvとなっていますが、現場の放射線濃度はとても濃いため、長時間そこに居たら容易に超えてしまうでしょう。事故で動けなくなったら生き地獄の果てに死んでいくに違いない。そんな危険を冒して作業を続ける彼らには最敬礼です。と同時に様々な判断ミスの果てに彼らに危険を冒させている幹部連中は、事態収束後は刑事裁判にでもかけるべきと思います。


 急激ではなくゆっくり浴びた場合は?
 この場合、細胞が死ぬ数は多くないでしょうが、かわりにガン細胞が増えます。つまりガンになりやすくなるわけですが。
 どのくらいの放射能を浴びるとガンになりやすくなるのか。

 放射線は自然に存在しており、世界中で平均2.4mSv/年の量を浴びるといわれています。自然被爆で死んでしまうようでは、そもそも人類が栄えているはずがありません。安全量です。
 世界の中には10.2mSv/年の放射線が出ているところがあるそうです。そこの人たちはいたって健康どころか、ある種の病気については他の土地よりもむしろかかりにくいそうです。安全量どころか健康によさそうです。
 CTスキャンを行うと7〜20mSv浴びることになりますが、それで体調を悪くした人の話などわたしは聞いたことがありません。安全量です。
(※CTスキャンの放射線量は一瞬にして浴びる量であるので、年間で徐々に浴びる量と単純比較はできない点に注意です)

 ……うん、わかんない。
 そもそも原理上、身体を通った放射線がDNAに当たるとは限りません。何も影響を与えず素通りすることもありましょう。放射線が少量だと運次第です。
 放射線がDNAに当たったからと言って、その細胞がガン化するとは限りません。無事に修復できる場合も多くあります。修復力には個人差があるでしょう。
 放射線により細胞がガン化しても、少量なら免疫機能がやっつけてくれます。免疫の強さも個人差がありますし、体調次第で上下します。
 積算でこれくらい浴びると危ない、なんて指標は個人差が大きくて出すことができないのです。人体実験して測定するわけにも参りませんし、DNA修復力や免疫力の異なる動物の値を流用しても役に立ちませんし。

 だいたい、放射線は人体の健康な細胞にあたることもあれば、ガン細胞に当たることもあるし、細菌やウィルスに当たる事だってあります。細菌やウィルスのDNA修復能力は人間よりはるかに低く、人間の細胞よりも放射能によって死にやすいのです。ガン細胞の修復能力はわかりませんが、まともに機能していないことのほうが多いでしょう。
 そのため、微量の放射能はむしろ健康によいのです。ラジウム温泉が健康によいとかガンに効くなどと言われるのは、そういうことなのです。

 というわけで、ここは政府見解を信じるしかありません。
 法律では、放射線業務につく人が浴びてよい放射線の量を『5年間に100mSv』と定めています。放射線業務につく人、といっても訓練で放射線の影響を受けにくい身体になったとか言うことはありません。放射線を浴びる量に気を使っているだけで、普通の人と変わりありません。というわけで、一般人でもこの量がボーダーと仮定します。
 5年間で100mSvということは、20mSv/年です。最近よく報道される単位に直すなら、一年は365日×24時間なので8760で割って、2.28μSv/時です。

 昨今で報道されている各都市の放射線量で、避難区域以外で2.28μSv/時を越えている箇所は3/24現在まだなかったはずです。
 よって安全……少なくとも数字の上では。

 上記はあくまでも体外から放射線を受ける外部被爆についての話です。放射性物質を体内に取り込んでしまうことによって起こる内部被爆については、また別途書きます。




 さて。外部被爆についてはわりかし安全だ、と今まで書きましたが、例外がいくつか考えられます。

・生殖細胞(特に卵子)あるいは受精直後
 DNAに異常が起きた精子や卵子が受精すると、異常なDNAを持った奇形児が生まれることになります。受精直後に放射線が命中しDNA欠損した場合も同様です。
 精子は数が多いので、DNA異常が起きても自然淘汰されやすいと考えられますが、卵子のほうは危険が大きいと思います。このため、出産可能な女子は他の人よりも放射能を避けたほうが無難です。
(放射線業務につく人が浴びてよい放射線量の制限値も、出産可能な女子は他の人よりも期間が細かく区切られ、値も厳しく、また緊急作業が認められないなど、この観点に基づいて制限が強化されています)
 ラジウム温泉が健康にいいとは言っても、出産可能な女子の方は入浴を避けるか、短めにしておいたほうが無難であるかもしれません。そもそも長湯厳禁の施設ではありますが。

・胎児、乳児、幼児
 成長期は細胞が増える力が強いので、ガン細胞が発生してしまうと免疫が間に合わないことが多くあるようです。
 このため、胎児、乳児、幼児は特に気をつけるべきです。
posted by きさらぎ at 14:09| Comment(0) | TrackBack(0) | サイエンス
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