2011年04月26日

今後のエネルギーを考える(3):蓄電その他編

 前の記事で『古い原子炉から順に、供給力に問題がなくなり次第停止するべき』と述べたが、それを後押ししそうなこんな記事があった。

NEWSポストセブン|「揚水発電」をカウントすれば原発なしでも夏の電力間に合う

 極論すれば、揚水発電とは巨大な蓄電池なのだ。その出力をもってすればピークはしのげる、というより今までもそれでピークをしのいだ経緯がある。
 原発がなくなる分、全体の発電能力は落ちるので、揚水式発電の"充電"に割ける時間や容量が減るかもしれない。ピーク時の消耗度合いと夜間の充電量で、充電量に軍配が上がるのならば供給危機をしのげることになる。
 今夏は総量規制や計画停電を凌げるのか否か。素人には試算しきれないが、期待はしてもいいと思う。
(政府の総量規制が避けられたからといって、節電しなくていいという意味ではないが)

 その話はさておいても、次世代発電方式、特にクリーンエネルギーが抱える『出力が不安定』という問題をどうにかするには、蓄電が重要になる。
 あと『何でもかんでも電気!』という思考からちょっと離れるためにも、それ以外の技術も少しだけ。

○揚水式発電

 夜の電力で水をくみ上げ、需要の上がる時間帯に発電するという仕組みの水力発電。いわば大規模な蓄電施設。日本では原子力の欠陥(出力の増減が容易ではない)を埋めるために多数建てられているらしい。
 蛇口をひねれば発電開始、というくらい発電所の中では発電の開始と終了が容易なので、大規模なベース発電装置(原発や石炭発電)と相性がいい。クリーンエネルギーは出力変動が激しいというか細かいので、蓄電装置としては大規模になる揚水式発電との相性はあまりよくないのではないだろうか。

○蓄電池、直流給電

 単三型充電池、自動車や携帯電子機器のバッテリー、UPSなど、既に日常にも多数使われている蓄電装置。
 UPSはまさに、(停電時に)商用電源の変わりに給電する装置、なのだが家庭用ではデスクトップパソコン1台を数分程度動かすのが精一杯である。その能力でデスクトップPCと同じくらいのサイズだったりする。
 家の電力を蓄電池でまかなうのはそれだけ大変、蓄電能力が全然足らない。しかも蓄電池は直流で放電するのに使う側で交流が必要だから、変換ロスがあるのだろう。そこで、家の給電を直流にしちゃえばロスが減る。ともすれば社会を変えるほどの取り組みだが、既にいくつかの企業が研究中だ。

【技術フロンティア】太陽電池生かす「直流」:日経ビジネスオンライン

 なお、電気自動車には大容量の蓄電池が搭載されているので、将来的には家庭給電用蓄電池の役割も担う可能性がある。

○水素燃料電池、R水素

 燃料のパワーを、熱機関を用いずに電力にするのが燃料電池。火力発電するよりも効率がよい。かつ、燃料を送り続けるかぎり永久的に発電できるため、蓄電池よりも連続放電量は有利。
 水素燃料電池ならば、燃料の水素と酸素は水の電気分解で得られる。実用例としてはエネファーム(天然ガスを分解した水素を使う)。

 供給過多のときに電気分解して燃料を作り、需要過多のときに燃料を使って発電すれば、実質的に蓄電施設となる。
 蓄電用のエネルギーには太陽光や風力などのクリーンエネルギーも使えるだろう。電気分解する施設の構造によると思うが、おそらく相性はよい。少なくとも揚水式発電よりは。

 水素は燃料なので当然、ガス燃料としても利用できる。燃やしても二酸化炭素を出さないので実にクリーン。ガソリンや家庭用ガスよりも爆発性が少々強いが、そこは制御技術の問題であり、
過大な危険視は風評ともいえる。飛行船の爆発事故のせいかな?

 この水素をエネルギーの中核に据えるというR水素なる思想およびプロジェクトも存在する。日本では全然知られていないようだが、デンマークのロラン島では実証モデル社会ができあがっているらしい。この島の車は水素で走るのか。

「R水素」は未来の話じゃない! 〜ロラン島から学ぶ再生可能エネルギーとまちづくり|地球リポート|Think the Earthプロジェクト

○金属マグネシウム燃料

 R水素が出たついでに、電気の話ではないが触れておく。
 海水にふんだんに含まれる金属マグネシウムを、太陽光励起レーザーというものを用いて取り出し、それを燃料に使用するという思想および技術。
 これもまた、クリーンなエネルギーにより燃料を抽出でき、燃やしても二酸化炭素を発生しないということで、次世代エネルギーの候補。
 以下のようなブログがあり、目下開発中のようである。また疑問視もされている。

世界は、石油文明からマグネシウム文明へ(1) | WIRED VISION
マグネシウムと水を燃料とするエンジンの疑問点。: ウラ漢汁

 というわけで、実証モデル生活圏が既にあるR水素と違い、残念ながら未だ実証に乏しい開発段階の技術。


○結論

 最終目標はクリーン発電とR水素ではないだろうか。
 マグネシウム燃料は、実用性が充分に開発されれば、さらにその先で実用化してR水素と併用するのがいいと思う。
posted by きさらぎ at 13:00| Comment(0) | TrackBack(0) | インフラ論
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